コロナ禍における製造業の対応

~有事に備えた資材在庫の持ち方~

 地球上の誰もが考えもしなかった新型コロナウィルスの感染問題は、まだ収束していません。外出自粛要請が解除され、経済が徐々に動き出していますが、第2波、第3波の到来を心配します。さらに、我が国では、これから自然災害の季節がやってきます。昨年は、台風19号による水害で、関東地方に大きな被害が出ました。


 このような状況下で、企業としてはいかなる災害が起こっても、社員の命を守り、企業活動を継続していく必要があります。そのために、事業継続計画(BCP)の策定は急務です。とくに、中小企業にとっては、1つの災害が命取りになるかもしれません。それを避けるためにやるべきことがあります。それは、災害時のリスク洗い出しとその事前対策です。

 人災・自然災害を問わず、有事の際にどんなリスクが想定されるのかを洗い出し、その対策を事前に講じることで、有事の際の被害を最小限に食い止めることが可能となります。「事が起こってからでは遅い」、事前に対策することがとても大切です。

 有事の際、さまざまなリスクが想定されますが、ここでは資材(原材料・部品)の調達リスクについて考えてみます。みなさんの企業では、コスト低減の観点から在庫削減に取り組まれていることと思います。しかしそれは、サプライチェーンがうまく機能していることが、前提となります。

 有事の際、物流の分断や取引先の被災によって、資材の供給が止まる可能性があります。そうなれば、自社の工場に問題がなくても、事業の継続に支障をきたすことになります。しかし、すべての資材在庫を増やすことはできません。そこで、長期在庫を保有する基準を明確にします。

 例えば、有事の際、どの資材に大きな影響が出そうか、その代替資材の調達の可能性、在庫量基準の設定等、無駄のない在庫管理に努めます。そして、在庫品の先入れ先出しは当然ですし、長期保有による資材の品質劣化に要注意です。

 今回の感染問題では、マスク・防護服・医療機器が不足し、一時医療現場が混乱しました。各家庭では災害に備えて、食料や水等を備蓄しているでしょう。製造現場でもいつ起こるか分からない災害に備えて、一部の資材の備蓄を検討されてはどうでしょうか。

 我々人間は、予期せぬ出来事に対して、それを過小評価し、敏感に反応できないことがあります。日ごろから、リスクに気付く感性を養って、未然に対策することをお勧めします。

 常に最悪を想定して有事に備えることは、「備えあれば患いなし」「転ばぬ先の杖」となります。